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【看護師が行う術前オリエンテーション】項目とその根拠

術前オリエンテーション,看護師

こんにちは!看護師歴10年目のたま子(@kangoshi_tamako)です!

手術を行う前には患者さんに看護師が必ず術前オリエンテーションをする必要があります。

術前オリエンテーションは慣れてしまえば、簡単にできる事なのですが、初めての方・慣れない方は説明に自信が持てず、不安に思うこともあるかと思います。

今回は学生さんや新人看護師さんのために術前オリエンテーションで注意すべき事・留意点を書いていこうと思います。

  • 術前オリエンテーションが初めて
  • 術前オリエンテーションに自信のない
  • そもそも術前オリエンテーションって何なの?

そんな看護学生さん・新人看護師さんは是非ご覧になってみてくださいね。

術前オリエンテーションとは?

医師からの手術に対する説明があり、それに対する患者さんの同意が得られた後に、患者さんに対して術前オリエンテーションを行います。

術前オリエンテーションでは術前の処置や手術前・手術中・手術後の流れを説明します。

病棟の看護師だけではなく、手術室看護師や(ICU入室が決定している場合の方は)ICU看護師からも説明が行われます。

そのように、手術を受けるまでに様々なスタッフが関わり説明をする事で、患者さんとその家族が安全かつ安心して手術に臨めるように働きかける必要があるのです。

術前オリエンテーションの目的

患者さんやその家族は手術を受ける前は不安でいっぱいです。

看護師が、必要な情報・手術の経過・予定を伝える事によって手術に対する不安を取り除く事ができます。

また、手術前や手術後の事前準備を行うように働きかける役割もあります。

患者さんが自分が術後取るべき行動を術前よりイメージしておくことで術後合併症の予防にも繋がるんです。

術後の早期離床の必要性・排痰方法や呼吸法に対する理解などを術前より理解しておく事で術後スムーズに合併症の予防行動を取る事ができるようになります。

また術前オリエンテーションは患者さんと良好な信頼関係を築く手段にもなります。

丁寧なコミニュケーションをとり患者さんの立場に立った説明を行う事で、患者さんは「この看護師さんなら大丈夫!信頼できる!」と思うようになるのです。

患者さんと良好な信頼関係を築くためにも、しっかりと術前オリエンテーションの項目と根拠を理解しておきましょう!

術前オリエンテーションの項目

術前オリエンテーションの項目はたくさんあります。

術前の患者さんを多く受け持った時は喉が痛くなるんですよね…。

次は術前オリエンテーションの項目について、その根拠も踏まえてまとめていこうと思います。

術前処置や準備についての説明

 

・手術の日時、開始時間と終了時間

家族の来院が可能かも合わせて確認しておきます。

手術の後の付き添いの可否についても家族の方に説明しておきましょう。

・麻酔の種類
麻酔に関する詳しい説明は麻酔の先生が行います。

・手術までに誰からどんなお話があるか
麻酔科医・手術室看護師・ICU看護師からの説明があります。

・準備物品
T字帯、オムツ、吸い口など必要な物の準備を依頼します。

・入浴・シャワー浴の必要性
手術前日には入浴・シャワー浴をするように説明します。

感染に対する抵抗力が低下している患者さん(ステロイド長期使用者、糖尿病患者、高齢者)の方は特に重要となってきます。

 

根拠
・細菌を洗い流す事によって、皮膚切開部の消毒効果を高める。
・手術によって術後長期間、入浴やシャワー浴をする事が困難となるため。
・術前の緊張をほぐすため。

 

・下剤内服・浣腸の必要性
術前には超内容物の除去を目的として、下剤を使用します。(グリセリン浣腸や内服薬など下剤の使用は様々。)

根拠
・麻酔による筋弛緩により排泄物が漏れだし、手術や手術器具を汚染させてしまう可能性があり、そうなる事によって手術が停滞し患者さんの身体に侵襲を与えてしまう。
・筋弛緩により腸蠕動も止めるため、腸内に排便があった場合手術進行の妨げとなったり、術後イレウスのリスクが上がる。

 

 

・輸液の開始の有無
手術前には一般的にリンゲル液(細胞外液に近い成分の輸液:ヴェーンD、ラクテック、ラクテックGなど)を点滴を利用します。

根拠
・手術により機械的刺激が加わると体内の血漿が減少して血圧が低下するために手術前に予めリンゲル液を補充しておく必要がある。
・ショック出現時には点滴を急速に滴下して体内を循環する血漿を増やし血圧を上昇させる事ができる。

 

・術前検査の有無
術前検査には色々な項目があります。それもまた機会があれば今度記載します。

・アレルギーや異常薬物反応の有無
手術の前に抗生剤や薬物に関する問診を行い、アレルギーの有無を確認します。

薬物アレルギーがあることが事前に分かっていればそれらを避けることができます。

・手術中の輸血について
大きな手術で手術中に輸血が必要であると予測される場合は術前に輸血に関する事を説明しておく必要があります。

輸血に関する詳しい説明は医師が施行し、患者さんに同意をとります。

自己血を使用する場合もあります

自己血輸血とは?
自分の血液を採取して輸血する方式で、感染症や免疫に関わる副作用から解放されるというメリットがあるため利用率は高くなっています。

 

・絶飲、絶食の開始時間
術前には麻酔の種類や術式によって異なりますが絶飲・絶食の期間があります。

根拠
麻酔中の胃内容物の逆流による誤嚥や呼吸器合併症の予防のため。

 

ポイント
認知症の患者さんや意識障害のある患者さんは間違えて食べ物を口にする可能性がありますので、自室に食べ物や飲み物がないか看護師がチェックし、絶飲食開始時間になれば、患者さんの目の届かない所に移動させる事も大切です。

 

・除毛
手術部位によっては術前に除毛を行います。
なるべく術直前に除毛していきます。

根拠
手術野を確保し安全に手術ができるようにする。

 

・爪切り

根拠
・術後は麻酔の影響で意識レベルが低下している可能性もあるので無意識のうちに創部に触れてしまう可能性がある。
・術後創部に揺れる事で爪先の最近により創部の感染を引き起こす。
また、長い爪により創部を傷つけてしまう可能性もある。

 

・化粧やマニキュアを落とす

根拠
化粧
・チアノーゼや顔面蒼白などのアセスメントが難しくなる。
・処置中にテープ類などを貼る事で皮膚損傷を起こす危険性がある。
マニキュア
・爪甲を利用して循環状態を把握するため。
(Spo2モニターはマニキュアをしていても拍動は感知する)

 

・金属類を除去する
ヘアピン・時計・ピアス・指輪・義歯などは術前に必ず外すように説明します。

根拠
・金属類は各種モニターの妨げになるため。
・電気メスなどを使用する際、金属が皮膚に接触していると電流が流れる事があり火傷の原因となる。

・義歯を外す

根拠
誤嚥の危険性、気管挿管時の破損や脱離、咽頭や食道などの消化管粘膜の損傷が起こる可能性がある

 

・コンタクトレンズを外す

根拠
・瞳孔などの観察の妨げになる。
・麻酔中に開眼していると乾燥するために危険。
・閉眼中に角膜を傷つけてしまう可能性がある。

 

 

・弾性ストッキングについて
DVTという合併症を予防するために装着します。
合併症についても合わせて説明していきましょう。

・術前術後に制限される内服薬について
患者さんによっては手術前後に内服薬の制限がある場合があります。
間違って内服してしまうと手術が延期・中止になったり、患者さんの身体に影響を及ぼす場合がありますので、きちんと説明しておくようにしましょう。

<術前後に制限が必要になる場合のある内服薬>
抗凝固薬・抗不整脈薬・降下剤・抗血小板薬・抗狭心症薬・抗痙攣薬・血糖下降薬など

制限する根拠
抗凝固薬・抗血小板薬
それぞれの半減期を考慮して期間を定めて中止する
血糖下降薬
術前術後には絶飲食期間があるため、血糖下降薬やインシュリン製剤を使用すると低血糖を起こす可能性があるため。

 

術前オリエンテーションを行う際のポイント(留意点)

医師のIC(インフォームドコンセント)に同席する

術前オリエンテーションを行う前は、ICに同席して患者さんが医師から実際にどんな説明を受けたのか、それに伴い患者・家族はどのように反応したのかを把握・観察します。

医師の記録は簡潔な場合が多くどのような説明をしたのか詳細なカルテへの記録はない事がほとんどです。

また、厳しいICを受けた患者さんとその家族はショックを受け、精神的に落ち込んでいる場合もあります。

医師からの実際の説明を把握する事によって、詳細な術式は何で基本的な術前の準備物品以外にどのような物品が必要になるか、患者さんが特にどのような術後合併症が起こる危険性が高く注意する必要があるか、などをオリエンテーションの説明に加える事ができ、より踏み込んだ術前オリエンテーションが可能になります。

また、ICに参加する事で患者さんや家族の説明を受けている際の表情や仕草などを観察する事ができます。

説明を受け、精神的ダメージが大きいと感じた場合は看護師が素早くフォローする事が可能です。

パンフレットに沿って説明する

術前オリエンテーションの内容はたくさんあり、患者さんが一度に覚えることは難しいです。

そのため、説明の内容をパンフレットにして渡すことが効果的です。

大切な場所は大きな文字で書いたり色を変えたり
言葉で説明する事が難しい内容は挿絵や図を見ながら説明したり

患者さんが理解しやすいように工夫しながら説明していく事が大切です。

特に重要な事を強調して話す

たくさん説明する事がありますが、特に重要な項目は強調して説明しましょう。

淡々と話すのではなく、抑揚をつけ、大切な箇所は大きな声で説明するようにします。

また、繰り返し説明する事も大切です。

患者さんの理解度を確認する

一度にたくさんの説明があるため、患者さんは説明の内容を理解出来きておらず混乱している可能性があります。

特に、高齢の方・意識障害のある方・認知症の方・難聴の方などは説明の際に注意が必要です。

本人の理解が難しい場合は家族の方も交えて説明を行います。

説明後には「絶飲絶食の時間は何時からでしたか?」とこちらから質問を投げかけ理解度を確認する必要があります。

入院期間が長い患者さんの場合はなるべく手術が近くなってから再度オリエンテーションを行う

術前オリエンテーションは患者さんの不安軽減のために手術が決定した際は早期に行うという事も大切ですが、あまり早すぎると手術開始までに患者さんが内容を忘れている可能性があります。

そのため、術前の入院期間が長い患者さんに対しては手術が近づいてから再度オリエンテーションを行い、患者さんの理解度を確認する必要があります。

術前オリエンテーションを行う時期としては2日前頃が適当であると考えます。
その辺りから手術の前日までに、絶飲・絶食や輸液を開始する場合が多いからです。

(注:しかし、準備物品の確認は早めに行いましょう!手術が近くなってからでは準備が間に合わない場合もあります。)

おわりに

術前オリエンテーションの項目はたくさんあって説明するのが大変です。

慣れない頃は説明する項目を抜かしていて先輩から怒られる…と言う事態もよく起こりますが、毎回決まっている事なので慣れてくると体に染み付いてスラスラ説明する事ができるようになりますよ。

術前オリエンテーションは患者さんの術前の不安を取り除き、合併症を予防する手段にもなります。

しっかりと覚えて、効果的なオリエンテーションができるようになってくださいね!

日々のお仕事お疲れの看護師さんへ

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最後まで読んで頂き本当にありがとうございました!

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