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大口病院点滴中毒死事件から学ぶ!看護師としてのあり方・働き方

大口病院点滴事件

2016年9月、世間を震撼させる事件が起きました。

いわゆる「大口病院連続点滴中毒死事件」

当時大学病院の病棟看護師をしていた私も、周囲の看護師達も、もちろん世間全体が驚愕した事件として記憶に新しいのではないでしょうか?

『看護師が患者さんの点滴に消毒薬を混入させ、意図的死亡させる』

人の命を救う事が使命であるはずの看護師が、故意に人を死に至らしめるなどという事は絶対あってはいけません。

しかし、これから第二の大口病院事件が起こる可能性はゼロとは言い切れません。

そこで現役看護師の視点から、大口病院事件を振り返り

たま子

今後この様な事件が起こらない様にするためにはどうすればいいかを少し考えてみました。

大口病院点滴異物混入事件ってどんな事件?

事の発端は今から2年前の2016年、大口病院の4階病棟の看護師が点滴袋を偶然ベッドに落としたことから始まりました。

通常泡立つはずのない点滴が異常に泡立っていたのです。

そこで不審に思った看護師が報告し、点滴を調べた結果…通常点滴内に含まれるはずのない成分が検出されました。

高濃度の消毒液(ヂアミトール)が点滴から人体に投与されていたのです。

ヂアミトールという消毒液は私の勤務する病院では扱っていないため調べてみました。

ヂアミトールはベンザルコニウム塩化物を主成分とする消毒液です。希釈して使えば安全で皮膚・手指・膣・医療器具・など人体から物品など様々な物の消毒に使用できます。

しかし高濃度のヂアミトールを人体に使用する事は大変危険です。皮膚の炎症・浮腫・脱水症状などを来たし、多臓器不全に陥り最悪の場合しに至る事もあります。

その危険な薬剤を患者さんの点滴に混入したのは、なんと患者さんを助けるのが仕事であるはずの看護師だったのです。

点滴に消毒液を混入したと言われる元看護師は久保木愛弓(31)容疑者。

同様の手口で入院患者2名を殺害したとされています。

そして驚くべき事に『20人くらいにやった…』と供述しています。

大口病院の4階病棟では2016年7月〜9月の間に患者48人がなくなっており、これはいくら療養病棟といえども多すぎます。

きっと更なる余罪も明らかになってくるでしょう。考えるだけでぞっとしますね。

久保木愛弓容疑者は神奈川県秦野市の県立高校を卒業後、看護の専門学校に通い看護師免許を取得しました。

大口病院に勤務したのは今から3年前になる様ですが…その間に一体何が彼女の中で一体何が起きたのでしょうか?

たま子

一看護師として今回の事件を振り返ってみました。

(※あくまで一個人・一看護師の意見としてご一読頂きます様宜しくお願いします。)

容疑者の動機はなんなのか?事件はなぜ起こったのか?

まず気になるのが事件の動機ですよね?

患者さんの点滴内に意図的に薬剤を混入して死に至らしめる…こんな残忍な事を一体どの様な動機で行ったのでしょうか?

久保木容疑者は

  • 「自分の勤務中に患者が亡くなって家族に説明するのが面倒で苦手だった」
  • 「患者さんの要望に応える事が多く仕事が嫌だった」
  • 「終末期医療の現場が辛かった」

などと動機について供述しています。

この供述を聞いて、看護師として「面倒だからって人を殺してしまうの?」「仕事が嫌だからって人の命を奪う理由になる?」と憤りを覚えました。

久保木容疑者のした事は決して許される事ではありません。

しかし、看護師としてどこか「もやっ」とする気持ちがあったんですよね。

それは…

『自分が100%事件起こさないって言い切れる?』事。

私がそう感じてしまったのにはこんな理由があります。

看護師は簡単に人を殺せてしまう

私は長い事大学病院の病棟看護師をしていました。

入院してくるのは重たい病気を抱えた患者さんばかり。そこには看護師の一挙一動が患者さんの生死を左右してしまう現実があります。

『私が痰を吸引するのがあと5分遅れていたら患者さんは窒息してたかも?』

『私の巡視があと5分遅れていたら多量出血でショック死してたかも?』

つまり…

『自分の僅かなミスで患者さんの命を奪ってしまう…』

そんな重たいプレッシャーの中、追い詰められた精神状態で常に働いていました。

大口病院事件の容疑者の様に意図的に患者さんを殺そうとは思っていなくても…看護師は自分の小さなミスで簡単に人を死なせてしまうんですよね。

毎日当たり前の様に出勤し業務をこなしてはいますが、ふと我に帰り振り返ってみると血の気が引くほど恐ろしくなることがあります。

この様に『人の命を預かるプレッシャー』や『命に危害を与えることの恐怖』、それらを感じるのが当然の反応ですよね。

でも張り詰めた緊張感で働く中、看護師が『命の重み』の感覚が麻痺していったとしたらどうでしょうか?

看護師は簡単に殺人犯となることができます。

大口病院点滴異物混入事件はなぜ起こったか

『容疑者はどうしてこんな残忍な事件を起こしてしまったのだろう…』

容疑者が産まれ持ったサイコパスで根本的に人としての倫理観や道徳心が欠如していたと言ってしまえばそれまでではありますが

  • もともと普通だった人間が徐々に変わっていってしいまった…
  • 長い年月をかけて精神が蝕まれていった…

と考えれば、全国の看護師から第二の久保木容疑者が生まれる可能性も完全にゼロとはいいきれません。

『容疑者には事件を起こす理由があった』なんて言うとまるで大口病院の容疑者の元看護師を擁護している様に感じるかもしれませんが決してそうではないのです。

もし事件が起こった《原因》があるとすればその《根本》を考える事で次なる事件を防ぐことができるはず…そんな思いで容疑者の元看護師の心境を想像してみました。

療養病棟の延命治療の現実に耐えられなかった?

久保木容疑者の働いていた大口病院の4階は療養病棟でした。

療養病棟は手術や治療を行う「一般病棟」とは違い、ある程度状態が安定した患者さんを長期的に療養することを目的とした病棟です。

私は療養病棟で働いた事はないので詳しい状況はわかりませんが、看護師として辛い状況に立たされることも多い様です。

ツイッターでもこの様なツイートが話題になっていました。

こちらのツイートによると自分で自己決定もできないほど衰弱している患者さんを年金をもらうために家族が生かしているという事例もある様。

中には「ばーさんの年金無くなったらどうしてくれる!」「16日までにはどうか生かしておいてくれ〜!」なんて言うご家族の方もいるそうで、療養病棟の現実に驚かされました。

久保木容疑者は供述でも『終末期医療の現場が辛かった』と訴えています。

もしかしたら自分の意思は無視され家族の意向で延命治療を患者さんや、苦しみながら毎日を過ごしている患者さんがいたのかもしれません。

看護師という仕事に対するプレッシャー?

あなたもご存知の通り、看護師はプレッシャーの大きい職業です。

特にターミナル(終末期)の患者さんと関わる際のプレッシャーは通常の何倍も大きくなります。

私も約10年の看護師経験の中で色々な患者さんの最後を目にして来ましたが、中には今でも目に焼き付いて離れない場面もあります。

末期癌で全身転移。麻薬を投与でも抑えきれないひどい癌性疼痛。『痛い!痛い』とベッドの上で身の置き所がない様にもがき苦しみながら亡くなっていく患者さん…

口腔内・咽頭の腫瘍が徐々に増大。少しずつ息ができなくなっていく。目を見開き涙を流しながら亡くなっていく患者さん…

あなたはそんな場面で冷静な心理状態で働く事ができますか?

思わず目を覆いたい、逃げ出したくなる様な場面でも看護師は気丈に振る舞い、患者さんに寄り添わないといけません。

人を殺してしまう心理状態は到底理解で来ませんが、患者さんの死に直面した時に感じるプレッシャーは痛いほどよくわかります。

容疑者はそんな看護師という職業へのプレッシャーを感じるあまり気持ちが崩れていったのかもしれません。

私は看護師になる前、大学生の時にうつ病になった経験がありますが…うつ病を患っていた当時は今の自分とは全く違った精神状態になっていました。

お笑い番組を見ても全く笑えず、赤ちゃん子供を見てもこれっぽっちも可愛いなんて思わないほど無の感情になっていたんですよね。

『人は心を病むと違う自分になってしまう。』

その経験があるからこそ、「もしかしたら自分にも起こり得る事件だったのかも…」ちょっと大げさではありますがそう思ってしまったのです。

大口病院事件をめぐる2つの意見『容疑者個人の問題か?医療・看護の現場の問題か?』

これまでの記事を見るとまるで私が大口病院事件の容疑者を擁護しようとしている様に感じるかもしれませんね。

インターネット・SNS上でも大口病院事件をめぐって様々な意見が飛び交っています。

まずは今までの意見の様に延命治療の現実や看護師としての職業の本質に原因を感じる意見。

それに反して延命治療や看護師としての職業の本質とは離して考えるべきという意見。

大口病院の事件に関して分かれる2つの意見をまとめてみると…

  1. 医療や看護に原因があるのか?
  2. 容疑者個人の原因なのか?

って事。

一部では延命治療や終末期医療、看護師という職業の過酷な現実にスポットを当てて考える意見もありますが

もう一部では『それとこれとは全く別物だろ?』『仕事がしんどいからって人殺していいの?』と、容疑者個人の問題だと考える意見も多いです。

私個人としてはどちらの意見も同じくらい頷けます。

そもそも、大口病院事件の容疑者元看護師の思いや病院での医療の現実がメディアやインターネット上から得た情報のみで《憶測でしかすぎない》のですからどちらかに断定はできないのです。

とりあえず間違いなく言えるのは『今後こんな悲しい事件が起きてほしくはない』という事です。

容疑者個人に全ての原因があるならどうする事もできませんが、医療や看護の現場に問題があるとすればそれを改善する事で事件を防ぐことができます。

今後、第二の大口病院点滴異物混入事件が起きないために医療や看護の現場がどうあるべきであったかを一看護師として考えてみました。

第二の大口病院点滴異物混入事件を起こさないために必要な事

点滴の管理の徹底

まず今回の事件が起こった原因の一つに点滴の管理が徹底していなかったという事があげられます。

報道では大口病院は『点滴を誰でも触れることができる場所で管理していた』とあります。

今回は看護師の犯行ではありましたが外部の人間が点滴に薬物を注入する可能性もないとは言い切れません。

日勤中は看護師の人数も多く点滴の調剤室も意識しなくても人目につきますが、夜間は看護師の人数も減りナースステーションがもぬけの殻になる事も多々あります。

そんな時点滴が誰でも触れる場所に起きぱなしにされていたら…簡単に異物が混入されてしまいます。

そのため点滴の管理を徹底する事が大切です。

私は大学病院に勤めていたのでこの事件が起きてすぐに病院の点滴マニュアルが変わりました。

点滴調剤室には職員しか入れない様に鍵がつき、更には調剤室に監視カメラが付いたのです。

これで外部の人間がそう簡単には薬剤を混入する事は出来なくなり、仮に職員が薬剤を混入したとしてもすぐに犯人を突き止める事ができます。

看護師の精神的ケア

繰り返しますが、大口病院の久保木容疑者は決して許されない事をしました。

どんな理由があっても人を殺してしまう事はあってはなりません。ましてや人の命を救うはずの看護師が患者さんを…なんてとんでもないです。

でも、今回の事件の様に看護師が患者さん殺すまでには至らずとも虐待したり苦しめたりする事件は時々目にしますよね。

つまり、看護師という職業の本質的な問題も否定できません。

  • 自分の一挙一動の重みに耐えられずに爆発しそうになった時
  • 死にゆく患者さんに日々接して心が壊れそうになった時

疲弊した看護師の精神的なケアがきちんと行われる環境づくりも大切です。

定期的に病棟師長(上司)と面接を行い看護師の精神状態の確認を行ったり、心を病んだ時は秘密厳守で相談できる場を設けたり…

看護師が辛い気持ちを溜め込まない様に職場環境を改善するのも一つの手ですね。

看護師としての働き方の見直し

最後に、根本的な問題にはなりますが…

病棟看護師は忙しすぎます!

以前「【看護師は忙しすぎる!】現役看護師が忙しさを内部告発します!」にも書きましたが、1分1秒を惜しんで絶え間無く動き回り同時にいくつもの指示の優先順位をて頭をフル回転させないといけません。

忙しすぎる労働環境も看護師のメンタルが崩れて行く原因の一つです。

私は現在看護師約10年目でだいぶ仕事にも慣れてきましたが、新人の頃は体も頭もついて行かずかなり苦労しました。

仕事でミスする恐怖に怯えて眠れない日や、激務の夜勤の前は胃の痛みを感じながら出勤した日もありました。

そしてそんな毎日に耐えきれずに結局大学病院の病棟勤務はやめて今は外来でのパート看護師になったんですけどね。

私は思い切って労働環境を変えましたが、辛くても我慢しながら働いている看護師達もたくさんいるはずです。

これは一看護師がどうこうできる問題ではないのですが、もっと穏やかな気持ちで働ける様に人員の増員や業務内容の改善をしてもらえる日がくればいいのになぁと日々感じています。

まとめ

大口病院点滴異物混入試験は看護師が自分の都合で患者さんの命を絶ってしまったとても恐ろしい事件です。

『容疑者元看護師は本物の悪魔!』『完全に狂ったサイコパス!』と、非難する事は簡単ではありますが、多角的な視点で根本的な原因を考えるのも大切なのでは?と思い今回の記事をかいてみました。

看護師は患者さんに寄り添い、命を助ける事のできる素晴らしい職業です。

決して特権を悪用してはならない!世間から間違った誤解を受けてほしくない!と強く思います。

大口病院事件の様な事が今後二度と起きない事と事件で亡くなった患者さんのご冥福を心からお祈りします。

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